障子と内土間の半平屋
暮らしの梳き鋏
鏡の前でお母さんが子どもの髪を切る音に、私は耳を傾けてきた。
わがままな注文ばかりのあの子も、はさみの奏でる音がお気に入りだった。
どうやら今回はあの子が私をスタイリングしてくれるらしい。
「どんなスタイルがいい?」
長年暮らしを見守ってきた広い空間に、梳き鋏が入る。
2階から皆と見た、山に夕日が沈む景色。
引戸にあしらわれたモザイク柄のカタガラス。
思い出の形を随所に残してカットは進む。
白い塗り壁をベースに、季節に合わせて変わる庭木のカラーリング。
格子と障子には均一になるよう丁寧に櫛を通してくれた。
今までとこれからを重ねた新たな輪郭で、
はさみの響きに今日も耳を澄ます。
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